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「ドイツ連邦軍のシンクタンクによる研究が劇的な石油危機を警告」
 2010.8/31(シュピーゲル紙

  

市場は崩壊し、民主主義は揺らぎ、ドイツは世界における力を失う:ピークオイルによって、世界経済がいかに変わるか、連邦軍のシンクタンクが分析した。これは内部資料で、差し迫ったエネルギー危機について、連邦軍が非常に憂慮している状況をはじめて示したものである。

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この研究は、連邦軍の”Transformation Center“に属すシンクタンク、未来分析部によるもので、ピークオイル問題の安全保障政策面での広がりが、はじめて分析されている。この文章はまだ草稿段階で、もっぱら科学的主張で構成され、まだ国防省や他の政府の組織によって編集されていない段階であるという。

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<英国での並行した動き>
一方、英国でも類似の動きがある。このほんの1週間前、ガーディアン紙(ピークオイルへの警告が秘密の公式会談で明らかに)がリークしたところによると、英国のエネルギー気候変動省(DECC)は英国政府が供給危機にかなり大きな懸念を持っていることを示す複数の文章を極秘扱いにしているという。

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<市場の崩壊と世界的な連鎖反応>
ピークオイルの政治的経済的な影響を、ドイツにとってまさにはじめて、包括的にこの研究で調査している。石油専門家のSteffen Bukold氏によると、報告書のエッセンスは以下の通り。

●石油が国力を左右する
新たに形成される国際関係において、石油は決定的な要素となるだろう。「国際システムにおける産油国の重要性は相対的に高くなる。産油国はこの強みを活用して、内政や外交上の展開の可能性を拡大し、新たにまたは再度その力を強めて、地域の、場合によっては世界においてさえも、リードする権力として定着していくだろう。」

●産油国の重要性が高まる
石油輸入国にとって、資源をめぐる競争の激化は、同時に産油国との友好関係をめぐる争いが激しくなることを意味する。
産油国は、しまいには政治的、経済的あるいはイデオロギー的な目的を果たすために利用できる“機会の扉”を開くことになる。この扉は限られた期間にのみ開く。「そして産油国側の利益をより攻撃的に押し通す、という事態を生むだろう。」

●政治が市場に替わる
供給不足は、エネルギー市場の自由化の後退をもたらすだろうと予測している。原油市場において自由に国際取引される原油の割合は、二国間の交渉を通して取引される石油のために減るだろう。
長期的には、原油の国際市場は、制限された自由市場経済的な法に従うことになるだろう。「1970年代の石油危機のころに見られたような、二国間の条件つき供給協定や特権的パートナーシップが、再び現れるだろう。」

●市場の機能不全
著者たちは、石油不足がもたらす暗い結論を描いている。物流は石油に依存しているので、商取引は急激に高騰するだろう。結果として、生命に関わる重要な物資の供給不足が発生する、例えば食糧の供給がそれだ。石油は、全ての工業製品の95%の生産に、直接または間接的に使われている。そのため、価格が与える衝撃はあらゆる産業分野および商品化が行われる流通構造上のほとんど全ての工程に及ぶだろう。「中期的には、世界的な経済システムと全ての市場経済的に作り上げられた国民経済は崩壊するだろう。」

●計画経済への逆戻り
全ての経済分野が強く石油に依存しているので、ピークオイルは「部分的または完全な市場の機能不全を引き起こす」可能性がある。「想定しうる代替的な方策として、政府による配給制や重要物資の割り当て、あるいは生産計画の作成そのほかの強制的な措置が、危機的な状況下では、短期的に市場経済メカニズムに取って代わるということだ。」

●世界的な連鎖反応
「石油供給の転換は、ピークオイルの始まりまでに、すべての地域で等しく可能なわけではない。」と述べている。「おそらく、世界中の多くの国において、必要な投資が適切なタイミングで、十分な規模で行われてはいない。」しかし、世界の幾つかの地域で経済の崩壊が生じれば、ドイツも影響を受ける。ドイツは世界経済に緊密に組み込まれているので、他の国々の危機から逃れることはできない。

●政治的正当性の危機
この研究では、とりわけ民主主義の存続を懸念している。一部の人々はピークオイルによって直面する変革を、「包括的なシステム危機」と捉えるかもしれない。このことは、「現在の国家形態に対するイデオロギー的で極端なオルタナティブのための余地」を生むだろう。」この状態に置かれた市民層に生まれる分裂は、おそらく、「極端なケースでは紛争に到る」可能性がある。

<ドイツ政府に対する衝撃的な勧告>
未来分析部が描いたシナリオは、劇的なものである。「石油輸入に依存する国々は、外交政策上、産油国に対してより実際的に」ならざるをえないだろう、という。政治はエネルギーの供給保証という最優先事項によって、下位におかれざるをえなくなる。
ドイツにとって具体的には:ロシアとの外交方針においてより譲歩的になるだろう。また、イスラエルとの外交関係は、他のアラブ産油国との関係悪化を避けるために抑制されるだろう。

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抄訳: 手塚智子(NPO法人 太陽光発電所ネットワーク)